企業のパフォーマンスと組織開発の効果
そう、組織開発は難しい。組織活動という複雑系を適切にマネージするのは簡単ではない。
人の組織は、個々人という同じものがほとんどない、かつ時間軸でも考え行動が変化する生物という、まさに完全なる変数が、相互にインプットアウトプットし合い自ら加工プロセスを動かしている状態で複雑に絡み合った集団である。それをマネージするのは簡単ではない。
簡単ではないから、それをやりやすくするために、ほとんどの企業組織には様々な権限を使えるようにしてあるマネージャーがいる。その権限を使うことで、バラバラにならないようにマネージしている。
その権限を、適切に使うために、人材育成も必要になる。パワハラ防止研修などもその一つだろう。
過去に支援した企業には、数社が合併して大きな企業になった顧客もいる。合併前の個社の一つは、製品の差別化が弱く、営業でゴリゴリやる、いわゆる軍隊的組織の企業文化。別の個社は研究開発が強く自由な発想であれこれワイワイやる、楽しいサークルのようなフラット組織の企業文化。
そのような大きく異なる企業文化では、マネージャーの適切な行動も異なる。軍隊的組織でのマネージャーの適切な行動は、フラットな組織ではパワハラとして捉えられ、フラットな組織でのマネージャーの適切な行動は、軍隊的組織では指導不足として捉えられたりする。
このような異なる企業文化の個社が合併した企業組織を機能させるためには、組織開発によって全体感をつくることが必須であり重要だ。
しかし、日本の、特に伝統的な企業には、組織開発を専門に行う機能は無く、有ったとしてもそのチカラはとても弱い。組織開発をするための強いチカラは、平時にはそれほど必要がないため、保有することでコスト増にもなるからと解釈できる。
平時には人材育成を安定的に実施し、ある程度継続して発生する小さな組織開発を行う。
企業合併や事業再編、業績悪化の抜本的改革など戦時には、安定的な人材育成よりも、大ナタをふる大きく早く濃厚な組織開発が必要となる。
しかし、そのようなチカラを自社の中に保有し続けている企業は少ない。そして、もしかすると、大ナタをふる大きく早く濃厚な組織開発の必要性を考え判断する機能・能力そのものが無い場合もある。
外部の組織開発専門家の存在は、そのような戦時に特に重要な存在なのだ。いわゆる傭兵として戦時に雇われ、平時になると去ってゆくのが外部の組織開発専門家だ。
筆者の一部分は、そのような存在でもある。人と組織を活かすための傭兵だ。
企業は外部の組織開発専門家を戦時にだけ活用することで、平時に固定費を持たずに、戦時を乗り越えることができる。
日本企業も、組織開発をそのように進めても良いとは思うのだが、まだまだ組織開発よりも人材育成に偏り過ぎた人への施策、が多いと感じている。
筆者が、しくみを変えるコンサルタントを企業へ提供していた時代には、「人が悪いのではなく、しくみが悪いのです」と言っていた。
しかし、コンサルティングの場では、人に関わることが多かった。紙に書いた文字や図だけで、企業は変わらなかった。人が行動することが必須だった。
そして、筆者は、「人が変わらなければ何も変えられない」と感じ、人材組織開発領域へ移った。
そして、人材組織開発領域で専門性を高め、同時に過去のコンサルティングのバックグラウンドを活かしてコンサル案件もこなす中で、しくみを含めた組織開発がとても重要であることを確信した。
人だけにフォーカスするのではなく、その周囲の環境にもフォーカスしなければならない。環境というしくみだけを変えても人が行動変容しなければ結果は出ないが、人の周囲の環境というしくみを変えることで、人の行動変容も加速させることができる。
ぜひ、そのようなアプローチも活用しながら、日本を元気にしていきたいものだ。

