境界管理の大切さ ②
・・・つづき。
人の社会の中でも、多様性を活かすためには、違いを活かすための適切な境界管理も大切だ、と考える。
そもそも、企業組織で、分化する、つまり、機能部門としての営業や調達や生産など、それぞれに分けるのは、専門性を高めてアウトプットを高くする意図もあるが、管理する側が管理を楽にしたいから、という意図もある。分化して単純化することで、複雑なものを管理しなくてよくなるからだ。複雑なものとは、多様なもの。個々人の違いが集まっている多様な状態。それを、管理する側として楽に管理したいから、画一的に扱う。そうやって多様性が活かされなくなる。
過去の企業は、そのような管理、というか、制御で成り立ったのかもしれない。多様性を活かすという概念が今より遥かに低かった、そして多様性を活かしていなくても誰からも何も言われなかったから。
しかし、今の時代は多様性は過去よりも遥かに理解され、人はみな同じでななく個々人によって様々な違いがあることも化学的にも解明されている。そして多様性を活かすことが善しともされている。
他方、もし、多様性を徹底的に活かすのであれば、日本はもっと移民を受け入れて多民族国家にならなければならないのかもしれないし、世界の中の西側と東側という棲み分けは互いを攻撃的に扱ってはならないのかもしれないし、筆者も近所を走る爆音バイクの意志と行動を尊重しなければならないのかもしれない。
そう考えると「多様性を活かす」という言葉だけでは、少々暴力的であり画一的でもある感じだ。
もしそうであれば「多様性を活かす」というのは、目的ではなく手段として主張することなのかもしれない。
どのような多様性を活かすのか、どのような多様性は活かさないのか、そのような境界が必要なのかもしれない。
人材組織開発をしている中で、「社員に経営視点を持たせたい」との経営側や人事側の声を聞く。しかし「社長に現場視点を持たせたい」とはあまり聞くことがない。
大きく複雑化が進んでいる組織で、社員に経営視点は必要なのだろうか?
それには限界もあるし、経営支店を持つべき社員と、持たなくてもよい社員という境界もある。その境界を設けるもの、組織開発上重要なことだ。そして、組織が動的な複雑系であるのであれば、その境界も動的なものになる。しかし、その動的な境界を静的にとらえてしまっている組織は少なくない。それが、組織開発の視点でみた、今の企業組織が強化すべきポイントでもある、そう考える。

